顧客満足度の向上を目的にお客様サービスセンターを開設した東京コカ・コーラボトリング(株)。 同社が展開するBtoBテレマーケティングについて話を聞いた。
受付業務をコールセンターに集約
近年、複数のコールセンターや事業所ごとに行っていた電話受付業務を、CTIを導入したコールセンターに集約する企業が増えている。
日本全国17カ所を拠点に各種飲料の製造・販売、およびそれらに付随する諸活動を行うコカ・コーラボトリング(株)。その代表的なボトラーのひとつとして東京都全域をテリトリーとする東京コカ・コーラボトリング(株)も、そんな企業のひとつである。
同社が、受注業務に初めて電話を採用したのは、今から約8年前のこと。当時、得意先からの注文、問い合わせの受け付けは、業態ごとに本社フードビジネスサービス事業部、レギュラーセールス事業部、そして東京都内にある50の営業所ごとに行われていた。本社内の事業部ではそれぞれが受付システムを導入していたが、営業所で
は一般的なビジネスホンのみで受付業務を行っていた。また、受付内容の管理においても本社ではデジタル化、営業所では伝票というようにその管理方法も異なっていた。
このような状況の中、同社では日々の業務で得た顧客情報を有効に活用し、顧客満足度の向上を実現するための方法を検討していた。その施策として、東京全域のお客様からの電話を一括して受け付けるコールセンター開設の話が持ち上がったのは1997年の秋のこと。同じ時期に、横浜、名古屋、福岡の3地域で、NTTの発信者番号表示サービス「ナンバー・ディスプレイ」がスタート、1998年2月には全国展開されることがきっかけとなって、統合コールセンター開設へ向けて、顧客データベースとナンバー・ディスプレイサービスを連動させたCTIの導入に踏み切ったのである。
以降、構築ベンダーとしてNTTを中心に準備を進め、1998年8月、東京都清瀬市にある同社多摩工場内にコールセンターを開設。お客様により良いサービスを提供し、顧客満足度を向上させたいという思いから「お客様サービスセンター」と名付けた。
一方で、近隣の主婦や学生をオペレーターに採用し、受付開始に向けて、会社概要をはじめ基本的な業務内容や商品知識、テレホン・スキルの研修を行った。
同社では本格稼動に先駆けて、同年10月1日よりテスト稼動を開始。14営業所の注文、問い合わせ、メンテナンスの受け付けから業務をスタートした。その後、1999年5月1日より、全50営業所の受付業務を行うべく本格稼動を開始した。
効果的な告知活動を展開
「お客様サービスセンター」の受け付けにはフリーダイヤルを採用。内容に関わらず、ひとつの番号で受け付けることで、得意先の利便性の向上を図った。
フリーダイヤル番号の告知には、フリーダイヤル番号を明記したフライヤーとステッカーを使用。ステッカーは、電話機や電話機の近くに貼ってもらえるようにと考えられたもの。ルートスタッフが納品の際、得意先に説明した上で手渡すという方法で配布された。
同社では、初回の告知活動を8月下旬から約40日間にわたり実施。二度目も初回と同様に、3月下旬から約40日間の告知期間が設けられた。
これらの告知活動が功を奏し、今では従来の営業所の電話番号へかけてくる得意先はごくわずか。これらの得意先には、次回からはフリーダイヤルへ電話をかけるようアナウンスし、徹底した告知に努めている。
全オペレーターがフレキシブルにインとアウトを実施
「お客様サービスセンター」では、現在約10万件におよぶ得意先からの注文、問い合わせ、メンテナンスを受け付けるインバウンド業務と、得意先へのご用聞きを行うアウトバウンド業務を展開している。
「お客様サービスセンター」のスタッフ数は、オペレーター59名、スーパーバイザー10名とセンター長の計70名。スーパーバイザーは、オペレーション・スキルの高いスーパーバイザー5名と、マネジメントを行うスーパーバイザー5名で構成されている。オペレーターは3交代制でシフトを組み、ピーク時には約40名が対応に当たっている。
インバウンドの受付時間帯は、年中無休の午前8時から午後8時まで。午後8時以降は留守番電話で受け付けている。留守番電話を導入したのは、得意先の利便性を考えてのこと。得意先はアナウンスに従い、屋号、電話番号、商品名、数量を録音すればいい。
同社の取扱商品は、飲料だけを見ても30を越すブランドと200種類以上のフレーバー、そしてそのパッケージは約160種にもおよぶ。コカ・コーラひとつとっても、容器や容量などによりその数は数十種類にも上るが、同社ではきめ細かい顧客データベースを構築しているため、たとえばA商店からコカ・コーラ1ケースと言われれば、これまでの取引履歴から“350ミリリットル缶のコカ・コーラ1ケース”の注文だと判断できるのである。
インバウンド・コールが集中するのは、午前10時~11時と午後3時~4時の1日2回。現在の1日当たりのコール数は1,400~1,500件。全稼動開始当初の1,000件と比べると、その間2カ月と日は浅いが、日々コール数の増加を実感しているという。同社では、これから迎える繁忙期には、1日に約2,000件のコールが寄せられるものと予測している。
一方、お客様サービスセンターでは、1日に2,400~2,500件のアウトバウンド・コールを実施し、注文をうかがっている。アウトバウンドは、あらかじめ得意先ごとに決められた曜日と時間帯に行われるが、曜日については、たとえば月曜日は○○町、火曜日は××町というように、地域ごとに決められている。得意先の業種・業態は多岐にわたるため、同じ曜日に一地域内すべての得意先へ電話をかけることは難しいが、ある一定の地域からある程度まとめて注文を取り、納品日を揃えることで、ルートスタッフの負担を軽減し、配送効率を大きく向上させたのである。
同社では、業務内容別にチームは作らず、オペレーターひとりひとりがインバウンドにもアウトバウンドにも対応できるフレキシブルな体制を整えている。インバウンドとアウトバウンドの切替は、受付状況をモニタリングしているスーパーバイザーが口頭で指示。インバウンドを行っているオペレーターは、パーテーションの上に「インバウンドしてます」と書かれた札を置いており、スーパーバイザー席から直接、目で確認することができる。また、スーパーバイザー席では、全オペレーター(全ブース)の業務内容と受付状況がリアルタイムで監視できるようになっている。今後同社では、インバウンドとアウトバウンドのコール・ブレンディングを効果的に行えるよう、システムの改善に取り組んでいく意向だ。
東京コカ・コーラボトリング(株)多摩工場内にあるコールセンターのオペレーションの様子。同社では、季節のイベントなどを積極的に活用して、働きやすい環境作りに取り組んでいる
ナンバー・ディスプレイを効果的に活用したCTIシステムを構築
システム構成は【図表1】の通り。CTIを構築するためのソフトウェアにはEDGEを導入。着信呼を効率よくオペレーターに分配するACDにはAPEX7400を導入した。これらに、ナンバー・ディスプレイサービスとフリーダイヤルを連動させることにより、より高度なCTIシステムの構築を実現している。
システムの特長は、発信者番号をもとに顧客情報を検索し、自動的にオペレーター端末に表示できること。発信者番号情報とデータベースがヒットすれば、オペレーター端末に瞬時に顧客情報がポップ・アップされるため、得意先を待たせることなく的確でスムーズ
な応対ができるわけだ。
同社のお客様サービスセンターは、一般消費者を対象としたコールセンターではなく、特定の得意先からの電話を受け付けているため、ヒット率は非常に高い。個人商店からの電話の場合はほぼ100%に近い確率でヒットするという。完璧に顧客を把握しているからこそなせる技である。
また同社では、着信してから10秒(3コール)以内に電話を取るよう努めており、10秒以内に取れるコールの割合は98%に達しているという。大半が1コールでオペレーターにつながり、放棄呼がほとんどないことが自慢だ。
前述の通り、お客様からの電話が着信すると、ACDがオペレーターに自動分配すると同時に、発信者番号をキーに顧客データベースを検索し、ヒットした顧客情報をオペレーター端末にポップ・アップさせる。オペレーターは電話がつながっているお客様とポップ・アップされた情報が一致していることを確認してから内容をうかがう。そして、注文、問い合わせ、メンテナンスといった内容に応じて専用画面を呼び出し、必要事項を入力していく。注文とメンテナンスの依頼はオンライン・システムで自動処理を行い、注文はホストを経由して各営業所へ、メンテナンスは本社修理部門へ転送される。クレームの場合はいったん苦情伝票を出力した上で、各営業所へFAXで連絡している。クレーム処理を自動化しない理由は、オペレーターの経験が浅いゆえに生じる話の取り違いなどから間違った連絡をしないよう、FAXを送る前に管理者が1件1件に目を通すためである。やはり、クレームとなるとその扱いは特に慎重になるが、システム的にはFAXの自動送信も可能なので、ゆくゆくは自動送信に切り替えていく意向だ。
一方、アウトバウンドの場合は、得意先がナンバー・ディスプレイ対応の電話機やアダプターを利用している場合には、電話機やアダプターにお客様サービスセンターのフリーダイヤル番号を表示する仕組みになっている。
同社にとって、顧客データベースは効率的なコールセンター運営の鍵を握ると言っても過言ではない。そこで同社では、日々データベースの更新を行い、本社、各営業所、お客様サービスセンターで共有している。これにより、お客様サービスセンターでは、常に最新の顧客データベースを基にオペレーションを行うことができるわけだ。
同社では、お客様サービスセンターを開設し、得意先からの電話を一括して受け付けることによるメリットに、①営業所にかかる電話が減り、営業所の本来の業務に注力できるようになったこと、②得意先の生の声が聞けることを挙げている。
②については、毎月1回、お客様サービスセンターで収集した得意先の生の声を、本社と営業所へ報告している。本社、および営業所では、それをもとに業務の改善に取り組み、顧客満足度の向上に役立てている。
オペレーターのスキル・アップを目指して
同社では、オペレーター研修に他社には見られないユニークなカリキュラムを導入している。それは“オペレーターがルート・トラックに同乗して得意先まわりをする”ことである。「市場からモノを見ろ」をトップダウンで推進している同社では、何事においてもこの思想がベースとなる。お客様の用件を一番はじめにうかがうのは、オペレーターだ。そのオペレーターが得意先の背景をまったく知らないのでは、本当に質の良い顧客サービスを提供することはできない。そこで、このカリキュラムが採り入れられたのである。
オペレーターは、①会社概要、②商品知識、③得意先訪問、④ディスペンサー、自動販売機、⑤テレホンマナー、⑥キーボードの操作、⑦システムの操作の全7行程からなる、約40日間におよぶ研修を終え、実際のオペレーションに携わる。その後はOJTはもちろん、新製品の販売時にミーティングを行うなどして、スキルの維持・向上に努めている。
今後同社では、より一層オペレーター教育に注力していく意向。研修はもちろん、多くの経験を積むことにより、オペレーション・スキルを向上し、ゆくゆくはクロス・セリングやアップ・セリングの実施を目指している。すでにシステム面では、これらを実現する環境は整えられているのだ。
一方、管理者についても、テレマーケティングに関するセミナーに参加させるなどして、マネジメント・スキルを向上し、効果的、かつ効率的なコールセンター運営を実現することによって、さらなる顧客満足度の向上に努める意向を示している。